船外機のギヤオイル交換について①

ヨコタオートです。

久しぶりのブログ更新、不定期にもほどがあり申し訳ありません。

 

さて今回は船外機のギヤオイル交換についてになります。

内容的に一回では長くなりそうなので数回に分けて書きたいと思いますので、ご興味がある方は長文になりますがお付合いください。

一回目はギヤケース内の構造的な内容になります。

 

 

さて現在では船外機の主流は2ストローク船外機から4ストローク船外機に移行しエンジン部分が載った船外機上部側の構造は大きく異なってきました。しかし上部と比較して下部側のギヤケース形状や構造は2ストロークのものと大きくは変わっていません。これは現在のギヤケース構造や形状が既に熟成され完成されたものだからだと思われます。(抵抗を減らす為のケース形状変更や、ギヤ比、ギヤの材質変更などは一部モデルでは行われています)

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車などのエンジンはクランクシャフト軸が地面に対して横向きですが、船外機では構造上エンジンが縦向きに備わっていますので、ギヤケースではエンジン部で発生した動力をギヤを介して横向きへ変換してプロペラへ伝える構造を持っています。

 

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 2ストローク船外機のカットモデルですが、シンプルで構造が分かりやすいです

・エンジンで発生した動力(回転)はクランクシャフトに連結したドライブシャフトへ伝わります

・ドライブシャフトによりギヤケース内まで動力は伝わりそこでギヤを介して横向きに動力(回転)は変換されます

 

 

この変換するギヤ部分では大きなトルクが発生しますのでハイポイドギヤという構造で90度回転軸を変換しています。またここでは前進ー中立ー後進の切り替えを行うクラッチの構造も有しています。当然ギヤやクラッチなどの金属部品同士が接触して駆動していますので潤滑、冷却、汚れの吸着、防錆など必要でありギヤオイルがこれらの重要な役割を担っています。

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 さすがにカットモデルは作成できないので分解中の部品を使ってギヤケース内部のイメージを作ってみました。ギヤオイルは赤い斜線の部分に充填されており、ギヤ、クラッチベアリング、シャフトなどを保護しています。ケースの外殻に比較するとオイルの入っているエリアが狭い事がお分かりいただけるかと思います。

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 ギヤ部分を拡大してみました。

写真向かって左から

「後進ギヤ」

クラッチ(中にプロペラシャフトが貫通しスプラインで連結しています)」

「前進ギヤ」

「(少し隠れてますが)クラッチを動かすシフトカムとシフトロッド」

「上に向かっているのがピニオンギヤとドライブシャフト」

になります。

写真では見やすくする為にそれぞれを離してありますが、実際にはピニオンギヤと前後進のギヤは常に接触しています(↓こんな感じです↓)。

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 エンジンが始動するとクランクシャフトに連結されたドライブシャフトも回転を始めます。そのドライブシャフト先端にはピニオンギヤがありピニオンギヤは前後進それぞれのギヤと接していますので一般的には前進ギヤは右回転、後進ギヤは左回転します。

上の写真の様にクラッチが前後進のギヤに接触していない時は中立(ニュートラル)でプロペラシャフトは回転していません。

リモコンレバー(またはシフトレバー)を操作することで連結したシフトロッドが動き、その動きがシフトカムからクラッチに伝わりクラッチが前進ギヤまたは後進ギヤと噛みあう事でプロペラシャフトが回転する仕組みです。

 

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 船外機ギヤケース内のクラッチです。大半がドッグクラッチと呼ばれる写真の様な形状をしています。前後にそれぞれ凹凸があり、これが・・・・・

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 それぞれのギヤの凹凸と噛み合い動力が伝達されます。

ちなみにリモコンレバーまたはシフトレバーの操作の注意点ですが

・必ず低回転(アイドリング回転)時に行う事

・出来るだけ素早くギヤが入る位置までレバーを倒す事

です。レバーの操作をゆっくりしてしまうと「ガッ、ガッ、ガッ・・・」と嫌な感じの音がしますが、その時にはクラッチとギヤの凸部が衝突しながら滑っている状態で非常に宜しくありません。金属同士なので摩耗しますし、酷ければ破損する事もあります。

 

参考までに過去に修理で持ち込まれた酷い事例ですと・・・

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摩耗したクラッチと・・・

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 新品のクラッチの比較

凸部の角が無くなっているのがお分かり頂けると思います。

これは後進側の凸ですが、ここまで摩耗するとレバーを後進にシフトしても入り難い、または回転を上げると噛み合いが抜けてニュートラルに戻ってしまうなどの症状が出てきます。

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 この時のギヤケースから排出したギヤオイルですが、鉄粉が混ざりギラギラしていました。購入されてから一回もギヤオイルを交換した事がなく、他の部分もメンテナンスがされていない様子でした(過去の整備歴は不明)。

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ヤオイルを排出するドレンプラグですが磁石が先端についたものも有り、この時にはこんな様子になっていました。 こうなっていたら何かしらの異常があると考えられます。

 

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 通常より多めに鉄粉がでる初回のギヤオイル交換でもこの程度の付着ですから、上の写真の異常さがお分かりになるかと思います。

(ギヤオイル交換時には、こういう部分も確認しながらの作業が必要です)

 

まあ、上記の事例は極端なものでギヤオイルの交換を怠ると必ずなるかと言われるとそうではなく、ここまでなるのは使い方に問題の大半がある事が多いですが・・・・・

 

何れにしても定期的な点検とギヤオイルの交換を行っておけば、早めに対応できますし使い方を良くしてもらえれば改善の余地もあります。

メーカーの推奨ではギヤオイルの点検と交換のサイクルは100時間/または6ヶ月の早い方です。

しかし海上での作業は出来ない部位ですから上架または船外機を陸上へあげる必要があり、なかなか推奨サイクルでは実施しづらいのが本音ではありますが、上架して船底清掃などのを行うタイミングが一般的にはベストではないかと思われます。

 

ヤオイル交換に関してユーザー様と会話しているとエンジンオイルの交換と比べて認知が低いと言いますか、阻害にされている様に感じる事がありますが、とても重要なメンテナンスになりますのでご理解頂ければと思います。

 

次回はギヤオイル交換で見つけられた不具合の事例などを紹介したいと思います。

最後まで読んで頂きましてありがとうございました。