船外機ドライブシャフト固着トラブルについて①(原因と症状)

ヨコタオート&マリンです。

 

2019年も残すところ僅かとなりましたが、今年はブログの更新がまったく出来ず申し訳ございませんでした。良くも悪くも大変多くの仕事をご依頼頂きまして、なかなかデスクに向かう時間が取れませんでした。メーカーさんと話すと特に地方ではマリン業界も後継者不足が深刻でどことも販売店さんは多忙で大変な様子です。

今後もこの傾向は進んでいくと思いますのでなるべくお客様に迷惑を掛けないように販売店も仕事のスタイル等に変化が必要になってくるのかもしれません。

また船外機自体も耐久性が良くなった事で、10年・15年・中には20年を経過した様なものも修理依頼がありますが経年による塩害なども連動しますので修理に至る分解などにも時間がかかります。

この辺りはお客様に船外機の使い方などを少し改善して頂く事で軽減される事もありますので日頃の接客時と合わせてブログなどでもご紹介が出来ればとは思っています。

 

 

さて前置きが長くなりましたが、今回の記事は主に経年劣化が原因である船外機のドライブシャフト固着トラブルについてです。

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毎年、幾つかのメーカーより新しいモデルが発売されますが過去のモデルでの症例をカバーしてより良いモデルが生まれその進捗には驚かされます。

しかし現実的に私達のような整備業者が実際に向き合う機会が多いのは過去のモデルであり、様々な症例と向き合い対応をして行かなければなりません。

2000年頃より各社が4ストローク船外機のラインナップを揃えだし既に10~15年以上使われた船外機も珍しくなくなり、初期のモデルについては20年を越えるケースも増えてきました。これに伴い当然船外機の経年劣化も進みます。

今回の記事の題材となる「ドライブシャフト固着トラブル」の原因も経年による劣化と合わせて船外機の使い方も主要因と言えるのですが、お客様に症状の聞き取りを含めて普段の船外機の使い方なども聞いていると・・・・・

「もう少し使い方を変えてもらえれば」

「もう少し構造を理解してもらえれば」

と思う事がしばしばあります。

 

つきましては、この様なブログ記事でも構造を理解されて少しでも使い方が改善される事でトラブルが軽減できればと思うこの頃です(まあ、仕事がなくなるのも困るのでほどほどに)。

 

 

 

ドライブシャフト&ブッシングとは?

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 まず、船外機のドライブシャフトとはですがイラストの様に中間ハウジングに設置されています。

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そしてイラストの様に、クランクシャフトで発生した動力をプロペラシャフトに伝達する縦方向のドライブシャフトを中央付近で支える軸受の役目を持っています。

船外機では最も長尺となる部品、ドライブシャフトのブレやエンジンによる振動を抑える保守部品であり、消耗部品です。(なおドライブシャフトブッシングですが、全てのモデルに装着されている部品ではありません) 

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サイズの大小もありますし、メーカー/モデルにより多少形状は異なりますが写真の様に真鍮製の軸をゴム製のダンパーで囲う形状となっています。

※写真は劣化にてゴムと真鍮部が分離してしまったものです

 

 

 

ドライブシャフト&ブッシングが固着した場合に発生する主な症状は?

 次にドライブシャフトとブッシングが固着した(または固着気味になった)場合に、どの様な症状が出るのかですがお客様からの問い合わせ(=依頼内容)にそって実例をあげてみますと・・・

 

1.エンジンを始動すると「キーキーキー」と異音がするケース

・エンジンは始動できるが船外機下部から「キーキーキー」と異音がする事がある

・また低速運転時にエンストする事がある

・症状がでない日もある

 

2.スターターモーターの動きが重たいケース

・エンジン始動時にスターターモーターの動きが鈍く重たい回り方をする

・スターターモーターが熱くなり、煙がでた

・バッテリーの充電不足かとバッテリーを充電(または交換)してみたが変わらない

※この場合はスターターモーター自体の不具合の他、スターターリレー、バッテリーケーブル等が原因の可能性もあります。

 

3.スターターモーターが回らない=エンジン始動が出来ないケース

・スターターリレーは起動して、スターターモーターのピニオンギヤも飛び出すがフライホイールが動かずエンジンが始動出来ない

・バッテリーの充電不足かとバッテリーを充電(または交換)してみたが変わらない

・スターターモーターが熱くなり、煙がでた

・バッテリーケーブルが焼けた

※この場合はスターターモーター自体の不具合の他、スターターリレー、バッテリーケーブル等が原因の可能性もあります。

 

主にこの様な症状でお客様より点検&修理の依頼があるケースが多いです。

1~3に進むほど重症となりますが、1の異音は鳴らずに2に進んでいる場合も多いです。またこの時には合わせてお客様からは以下の内容を聞き取りします。

・船外機のモデル

 =ドライブシャフトブッシングが付いたモデルなのか判断します

・船体の大きさ

 =荷物が多い、エンジンが小さいなど負荷が大きい程発生しやすい傾向にあります

・年式(購入した時期)

 =年数が経過している程、不具合が発生しやすいと言えます(特に未整備の場合)

・使用頻度

 =使用間隔が空くほうが不具合が発生しやすいと言えます(夏しか使わないなど)

・使い方

 =暖機&冷機運転をされるか? 1日での平均使用時間など

・清水フラッシング

 =水洗いを行うほうが勿論ですが不具合は発生しにくいです

 

当方にて販売したり定期的にメンテナンス依頼をお受けしている船外機の場合は、これら聞き取り内容について概ね把握している事が多いのですが、ドライブシャフトブッシング固着修理に関しては圧倒的に初めてのお客様(船外機)の依頼が多いので聞き取りをしています。

 

 

ドライブシャフト&ブッシング固着のメカニズムは?

次になぜ上記の様な症例が起こるかについてですが、多くは船外機が4サイクルエンジンになってから発生するケースが増えました(2サイクル船外機でも事例はありますが少ないです)。

◎2サイクルエンジンと比較して4サイクルエンジン自体の温度が高い

◎構造上オイルパンを備えておりエンジンオイルにより周辺温度が高い

排気ガス温度も高いのでドライブシャフトと平行する排気管の温度が高い

主にこれらの要因からクランクシャフトと連結したドライブシャフト自体の温度が熱伝導や、その周辺温度が高い事により高温となってしまいます。

そしてドライブシャフトブッシングのセットされる位置は基本的に冷却水を汲み上げ循環させるウォーターポンプの直上にあり多かれ少なかれ水(海水)がかかっています。中には意図的にウォーターポンプハウジング上面にパイロットホールを設けてこのドライブシャフトやブッシングの冷却と摩擦を軽減させるなどの機構を持たせている場合もありますが・・・

上記したように様々な熱的要因が重なり、ドライブシャフト(軸)とブッシング(軸受)という互いの隙間が狭い箇所に塩水がかかる訳ですから海水中の塩分が結晶化して堆積したり、船外機母材の高温による(アルミ)腐蝕が起こりやすくなります。

特に・・・・

・船外機の使用後に冷機運転をせずに直ぐエンジン停止をされてしまう使い方

・夏のみしか使わないなど使用の間隔が長い使い方をされる場合

・船体や積荷に対して船外機が小さく負荷が大きい場合

などは熱の残留度が高く、ドライブシャフトブッシング周辺に付着した海水が結晶化し堆積したり、母材のアルミの腐蝕進行が早くなる傾向にあります。

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この写真の程度は軽微なもので、ほとんど使用上に差し支えは発生しません。

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取り外しもスライドハンマー等で比較的短時間に外せます。


 

 

ドライブシャフト&ブッシングの固着を防いだり、軽減するには?

経年で発生するものですから完全に防ぐ事は出来ないと思われます。またドライブシャフトブッシングや周辺の劣化が具体的にどれぐらいで進むのかは、それぞれ条件が異なりますので言及は出来ません。よって軽減する対策としては日々の使用後にしっかりと冷気運転を行う事と、定期点検および部品交換になるのですが・・・・・

あまりドライブシャフトブッシングは消耗部品として認識されておらず、メーカーのサービスマニュアル等でも消耗部品扱いされているケースは少ないので我々の様なメンテナンス業者が口頭で説明をして定期点検と部品交換を推奨していく他ありません。

部位的にはギヤケースを脱着しないと点検や部品交換が出来ない箇所である事から、タイミング的に同じくギヤケース脱着が必要なウォーターポンプインペラーの点検や交換時には同時にドライブシャフトブッシングの点検または交換を必ず行っておくべきでしょう。

また、係留保管では条件が整いにくいので行われているケースは少ないですが清水フラッシングは勿論効果的です。

※マリーナやトレーラー等での上架&陸上保管の場合は毎回清水フラッシングはされると思われますので、これらの症状は起こりにくいかもしれません※ 

 

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写真はドライブシャフトブッシングの固着により実際にエンジン始動が出来なくなったもので、ギヤケース(ドライブシャフト)を引き抜いた後の状態です。

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ドライブシャフトブッシング自体は破損して跡形もありません

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ここまでなるとドライブシャフトブッシング膨張でドライブシャフトが掴まれていますのでギヤケースが簡単には外れません。スリングベルト等をかけてチェーンブロックなどで引き抜く作業となり時間(工賃)も多くかかります。

 

 

固着症状の分類とメンテナンス内容は?

当方でこのメンテナンスを行う場合、自身で販売した船外機は新品・中古含めて概ね状態を把握していますので定期点検やその他修理などをご依頼頂いた際に時期を見て行いますので、症状があったとしても下記の「①軽度の劣化」~「②中度の劣化」までとなるのが大半ですが、 

通販やオークションなどでお客様が直接購入してきた中古船外機や、他店さんで購入されて過去の整備歴が不明な場合には「③重度の劣化」も珍しくありません。実際に今年もこの箇所のメンテナンスを十数件行っていますが、「③の重度の劣化」ケースが6件あり全てが当方で販売していない船外機でした。

では、その症状の分類とメンテナンス内容ですが・・・

  

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①軽度の劣化:

まだブッシング取付け部分の形状は保っており工具等で取り外して周辺清掃と部品交換を行う事で問題なく使用が可能です。出来ればこの段階で状態把握して部品交換を行いたいです。

 

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②中度の劣化:

ブッシングのゴム部分のダンパーが千切れたり、真鍮製の軸が破損しています。周辺に堆積した塩分等の清掃に時間と手間がかかりますが、なんとか部品交換は行えるケースが多く船外機の継続使用も可能です。

 

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③重度の劣化:

ドライブシャフトブッシングは破損、取付け部分周辺の母材(アルミ)も腐蝕により原型を留めず清掃を行っても新しい部品を組み付ける事は出来ません。

この場合、モデルやシャフト長さなどの条件により異なりますがドライブシャフトブッシング無しで船外機を使用する事自体は可能ですが幾つかのリスクは伴います。

 

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④部位の破損:

ドライブシャフトブッシングが収まる部分が母材のアルミ腐蝕と堆積した塩分の圧迫などで破損したケースです。メーカーやモデルによりドライブシャフトブッシングがセットされる位置が異なりますので一概には言えませんが、修復には多額の費用が必要になります。

 

 

 

ちなみに、このドライブシャフトブッシングを点検または交換するにはウォーターポンプインペラー点検、交換時と同じくギヤケースを取外す必要があります。

通常、特に問題がない場合ですが・・・・・

・ギヤケースを固定しているボルト(またはナット) ✕4~6本程度

・シフトロッドの連結(ターンバックルで固定するモデルなど)

スピードメーター用のピトー管

などを取外すとギヤケースは自重で下がってきて外れるものですが

(位置決めのピボットピンが硬いぐらいで、プラハンで叩くと外れる程度)

ドライブシャフトとブッシングが固着した場合には簡単には外れません。

考えうる取り外しの手段としては

 

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①シリンダーブロックを降ろしてドライブシャフトを上から押す

 

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②船外機または船体を固定した上で、ギヤケースにベルト等をかけて引き抜く

になるかと思いますが、コストや工賃的に①を行う事はあまりないかと思います。

よって当方で行う場合は②の方法での作業が大半となります。

どちらにしましてもある程度の設備、知識、作業の安全を考慮しなければならず現場での対応は不可能で工場にて行う作業となります。

費用的には症状により1時間程度で外れる事もあれば半日以上かかる事もあり、外してからも部位の状態で清掃・作業内容や部品交換の有無が変わりますので基本工賃設定はしていません。

参考までに次回以降の記事で幾つかの症例をピックアップして紹介をしていくつもりです。

 

以上、今回はここまでとなります。

最後まで読んで頂きましてありがとうございました。

(ブログ記事について、時々質問や参考になりました等の連絡を頂く事もあり嬉しく思います。お伝えしたいネタはたくさんあるのですが、ワンオペの小さな販売店ですのでブログに向かう時間が年々思うようにはとれなくなってきました。良い意味での息抜きに冬の期間は不定期ですが更新予定ですので今後も読んで頂ければ幸いです)

 

p.s.

年末年始は12/31~1/5まで休業となります。

新年は1月6日(月)より通常営業となりますのでよろしくお願い致します。