小型船舶のライフジャケット着用義務化の拡大について

ヨコタオート&マリンです。

久しぶりの投稿ですが、今回は先日2月1日から法改正により小型船舶のライフジャケット着用義務化が拡大された件について触れてみたいと思います。

f:id:YKTMARINE:20180206094802j:plain

海事:ライフジャケットの着用義務拡大 - 国土交通省

 

①ライフジャケット着用の義務化拡大の履歴について

 まず義務化の拡大と言う書き方をしましたが、これまで着用義務があったのは以下の3項に該当する場合となっていました。

 ※平成15年6月からライフジャケットの着用を義務化

 1. 12歳未満の小児

 2. 水上オートバイの乗船者

 ※平成20年4月からライフジャケットの着用を義務化

 3. 1人乗り小型漁船で漁ろうに従事する者

つまり、これまでは上記に該当しない場合ライフジャケットの着用を努力するという扱いで実質は乗船する人の任意という扱いでした。

  

これが平成30年2月1日より法改正され一部の例外を除き小型船舶に乗船する全員がライフジャケットの着用を義務化されたという事になります。

自動車で言うところのシートベルトが義務化された事に意味合い的には似ていますね。

ライフジャケット、シートベルト共に非常にレアなケースを除いて着用(装着)していた方が事故などの際に生存率が上がることは容易に想像できますので本来は法律で決めなくとも自主的に装着するべきものではありますが、毎年ライフジャケットを着用していれば・・・・・といった事故は絶えませんので事故の救助に係る方や、待っている家族などの事を考慮するとライフジャケット着用を推進すると言う意味合いで良いことかと思います。

 

 

②ライフジャケットの種類(桜マークつき)

次に今回の法改正で着用が義務化になった訳ですが、ライフジャケット(救命胴衣)なら何でも良いという事ではありません。 

国の安全基準に適合したライフジャケットを着用する必要(義務)がありまして

   国交省HPから抜粋しますと・・・

 

ライフジャケットには、水中で浮き上がる力が7.5kg以上あること、顔を水面上に維持できることなどの様々な安全基準が定められています。
国土交通省が試験を行って安全基準への適合を確認したライフジャケットには、 桜マーク(型式承認試験及び検定への合格の印)があります。

 

 

とあります。

この桜マークについて船舶所有者の方は検査の際などに見たことがあるかと思いますが、桜マークは製品にそれぞれ以下のように表示されています。 

f:id:YKTMARINE:20180206111539j:plain

膨張式ですと内部に折りたたまれた気室に印字、またはタグに印字された場合があります。

f:id:YKTMARINE:20180206111739j:plain

固形タイプですと背面に印字されたケースが多いです。

 

何れにしましても国交省の認可を受けた製品であれば

・桜マーク

・型式:○○○○○型(製品により異なる)

国土交通省型式承認番号:第○○○○号(製品により異なる)

などの表示がされています。

 

桜マーク=国交省認可製品となりますが、今回は結果的に法律で着用が義務化され取締の対象になる訳ですから製品に対して何らかの基準が設けられるのは致し方ないように思います。

また桜マークしか認めない事については賛否あると思いますが、小型船舶の船長は自分だけでなく同船者である友人、知人、家族、子供の命を守る器具となりますので、出費がかさむなどの不都合もありますが安全を考慮して是非良い方に捉えて頂きたいと思います。 

 

ちなみにこの桜マーク=国交省の認可を受ける為にメーカーは以下の様な製品検査を行っています。参考リンク:製造メーカーの取り組みについて

 

 

 

③ライフジャケットの種類(桜マークがない)

また市場には桜マークのない製品も多数あります。

既存でユーザーが保有している物、販売されているもの含めてこれらは今後、小型船舶に乗船する際に着用していても違反の対象となりますので注意して下さい。

 

1.十分な性能を持つが桜マークがついていないケース(海外製の製品など)

f:id:YKTMARINE:20180206113452j:plain

写真はライフジャケットの業界では最も有名で安全性も高い製品の一つとされる「MUSTANG」のライフジャケットです。USコーストガードのオフィシャル製品でもあり性能は折り紙つきでしょう。しかし、これからはこの製品を着用していてもNGとなります。矛盾を感じる方も多いかと思いますが、それぞれの国で製品を販売する為にはその国の基準に適合している事を証明しなくてはなりません。

海外製の製品でも電化製品ですとPSEマークを取得したり、自動車も灯火設備はじめ日本仕様にしますし、船外機もJCI検査を受けて予備検査合格させてからの販売となります。

よってこういった製品の場合ですが行政に訴えるよりも本来は販売する側がこういった規制に対応するべきであると思います。

 

2.十分な性能を持つが桜マークがついていないケース(国産メーカー磯釣り用など)

 知人、友人には磯釣りをされる方が多いのですが「磯用ライフジャケット」も浮力は十分にある製品が多いらしいのですが認可を受けていない製品が多いそうです(※)。

(※すべての製品を確認できていませんので、この様な書き方にしております)

「磯用ライフジャケット」についてはポケットなどの収納やその他釣りに関わる機能ががあり、磯釣りには欠かせないそうですが概ねデザイン的に柄物(色や大きなロゴ付き)が多いので、別記しますタイプAに該当させるには色の面で課題がありそうですね。

 

ただし以下、水産庁HPより抜粋になりますが・・・・

    検索・検索結果:水産庁

釣り船(遊漁船)については、「船舶職員及び小型船舶操縦者法施行規則」において、
遊漁船業の適正化に関する法律」に基づく業務規定に則って運行している遊漁船は対象外としております。ただし、当該業務規程のひな形には、国土交通省が定める要件に適合するライフジャケットを着用するように規定されています。

 

とありますので、生業として渡船などを営む船舶では磯用ライフジャケットでも良いのかもしれません。これら業務船舶は船長の責任と解釈もありますので個々に問い合わせて見て下さい。

 

また以下は参考までに一部メーカーのレジャー用ライフジャケットに関する情報です

 

 

 

 

 

3.十分な性能を持つのかが不明なケース(安価な海外製の製品など)

Amazonなどで販売されている比較的に安価なライフジャケット。

CE認定、CCS船級対応などと記載されている製品等ですが残念ながらこれらも桜マークとは異なりますので、小型船舶に乗船する際には使用できません。

製品紹介には国交省の基準を満たしているとも記載されていますが・・・・・

小型船舶に乗船する以外の場面で、自己責任において波止場(陸)での釣りなどに使用する事は否定は出来ません。

また、お客様が所有している¥4000位の物を見たことがありますが構造的には問題なさそうでしたし、隠岐の島では良く見かけますが中高生がルアーロッドを持って島中で釣りをしていますが・・・・・

彼らの安全のためには、これらの安価なものでも良いのでまずはライフジャケットの着用を勧める段階の製品としては適当なのかもしれません(安価で安全ならなお良いですね)。

https://ja-jp.facebook.com/lifejacketsanta/

子どもたちにライジャケを!

 

④ライフジャケットの種類(タイプがあります)

次にライフジャケットですが、以下の様にタイプ分けされており小型船舶の航行区域に応じたタイプが必要になります。

 タイプ名 浮力 色の指定  反射材  笛  航行区域等
 条件
 TYPE A  7.5㎏以上  ◯  ◯  ◯ 全ての海域   なし
 TYPE B  7.5㎏以上  ◯ ×  ◯ 平水・沿岸区域等  不沈性+キルスイッチ
 水上オートバイ  なし
 TYPE C  7.5㎏以上  ◯  × ×  平水・沿岸区域等  不沈性+キルスイッチ+笛等
 水上オートバイ  笛等
 TYPE D  7.5㎏以上  ×  ◯  平水・沿岸区域等(非旅客船に限る)   なし
 水上オートバイ  なし
 TYPE E  7.5㎏以上  ×  ×  ◯  平水・沿岸区域等(非旅客船に限る)  不沈性+キルスイッチ
 水上オートバイ  なし
 TYPE F  7.5㎏以上  ×  × ×  平水・沿岸区域等  不沈性+キルスイッチ+笛等
 水上オートバイ  笛等
 TYPE G  5.85㎏以上  ×  ×  ×  平水区域(非旅客船に限る)
 不沈性+キルスイッチ+笛等
 水上オートバイ 笛等

 隠岐の島(島後)の場合ですが、一部のトレーラーに積載した可搬型ボート及び水上オートバイを除いて「タイプA」が必要になります。

タイプAですが「24時間浮力、本体(膨張式の場合は気室)の色、反射材、笛」などの条件があります。

f:id:YKTMARINE:20180206133955j:plain

一般的に小型船舶検査の備品として多く使われているのはオレンジや黄色の固形型ライフジャケットです。

f:id:YKTMARINE:20180206134102j:plain

黄色の製品

f:id:YKTMARINE:20180206111739j:plain

これらは大半がタイプA(胴衣の分類に記載)の商品が流通していますが・・・・・

f:id:YKTMARINE:20180206134228j:plain

f:id:YKTMARINE:20180206134322j:plain

ごく稀にタイプḠなどを見る事があります。タイプḠは平水区域用なので湖や指定された平水区域でしか使用出来ません。

f:id:YKTMARINE:20180206134939j:plain

また固形型ライフジャケットですがフロントがチャック(ジッパー)になっている物は、この様に破損していると備品として認められませんので注意が必要です。

f:id:YKTMARINE:20180206135114j:plain

最近の製品は、この辺りも少し改良されてよくなっています。

 

次に膨張式ですが・・・

f:id:YKTMARINE:20180206134652j:plain

外装カバー部分は赤・黒・青・迷彩色など様々ですが、

f:id:YKTMARINE:20180206135258j:plain

内部に畳まれて収納されている気室はこの様に黄色になっており、タイプAの要件を満たしています。(他、笛なども収納されています)

f:id:YKTMARINE:20180206135430j:plain

桜マーク付きなのか?タイプは?などの情報はこの様なタグに記載されているか気室に直接印字されており確認が出来ます。

f:id:YKTMARINE:20180206135556j:plain

古いもので外装にタグが付いていると、この様に印字が消えている事もありますが・・

(問 10)桜マークが消えてしまった場合は違反になりますか。
(答)国土交通省が行っている型式承認試験等に合格している製品であれば、桜マークが消えても差し支えありません。桜マークが消えていてもメーカー名や型式番号、製造番号は残っていますので違反の疑いで検挙された場合は、桜マークが付いているライフジャケットであることを申告してください。型式承認品はメーカーに確認することも可能です。または、最寄りの地方運輸局等に問い合わせください。

 

とありますので、まずは購入されたお店やメーカーのお客様相談などに問い合わせるのも良いかと思います。

 

⑤ライフジャケットの着用義務が適用除外・着用に努める義務となる場合

最後にライフジャケットの着用義務が適用除外、務める義務になるケースについてです。(国交省HPより抜粋して一部に加筆しています)

 

[1]船室内にいる方

 屋根と壁に囲まれた船室の中にいる方は適用除外になります。

※屋根だけを有するスペースのような風雨にさらされる場所は適用除外になりません。
※船室の窓や扉、甲板上のハッチが一時的に開いていてもその内部は適用除外になります。
 
◎ドア付きのキャビン(船室)のある船舶ですね、ハードトップ(屋根)のみのセンターコンソール艇などはNGです
 
 
[2]命綱・安全ベルトを着用している方

 命綱・安全ベルトを着用している方は適用除外になります。






◎その言葉のままですね
 

[3]船外で泳ごうとする方

 泳ぐためにライフジャケットを着脱したり船外へ移動したりするなど、

船外へ移動することを目的とした必要最小限の動作を行っている場合は適用除外になります。



◎あくまで停泊して係船や投錨などした後を指すと思われます。海水浴場などへ向かう過程は移動中であり異なります


[4]船外で専用の装備を用いたスポーツ・レクリエーションをする方

 ダイビング、水上スキーウェイクボード、シーウォーカーなどの船外において行う

スポーツ・レクリエーションを行うために、船上で専用の装備を着ている間は、その上からさらに重ねてライフジャケットを着ることが専用の装備の機能を阻害する場合に限り、適用除外になります。
※船外に身を乗り出す行為や、釣りなどの他の作業をする場合は適用除外になりません。
 
◎お客様にも該当する方がおられるので、詳細は確認をしてみます。ウェイクボードを今しようとする個人を指すのか、順番待ちの乗船員全員を指すのか判断が難しいですね




[5]船外において、専用の装備を用いた作業をする方

 潜水漁業、救助、調査、工事などの船外において行う作業を行うために、船上で専用の装備を着ている間は、その上からさらに重ねてライフジャケットを着ることが専用の装備の機能を阻害する場合に限り、適用除外になります。

※船外に身を乗り出す行為や、釣りなどの他の作業をする場合は適用除外になりません。
 
◎主にウェットスーツ着用などを指す様です。フルスーツなのかロングジョンのみでもOKなのか確認してみます


[6]安全措置が講じられたヨットレースの競技を行っている方

 国際又は国内で統一された安全基準に基づき、落水防止設備の設置、救助設備 

の設置、救助体制の構築などの安全措置が講じられているヨットレースの競技中は適用除外となります。
※競技と同等の安全措置を講じて行う練習も適用除外となります。
※ヨットを競技・練習以外に使用する場合は適用除外になりません。



[7]安全措置が講じられた船上における神事等

 船上において、儀式、祭礼、神事などを行うために必要な服飾を着用することにより、

ライフジャケットを着用することが適当でない方は、別の船舶からの監視・救助体制が整っている場合に限り、適用除外になります。





[8]防波堤内に係留された船にいる方

 防波堤の内側にある岸壁、桟橋、係船くいなどに係留中の船の上は「着用義務」が「着用に努める義務」になります。


 ※船外に身を乗り出す行為や、釣りなどの他の作業をする場合は適用除外になりません。






[9]船長が定めた安全場所の範囲内にいる方

 船長が責任をもって指定した「船外への転落のおそれが少ない場所(安全場所)」の範囲内にいる方は、船長の了解を得て「着用義務」を「着用に努める義務」とすることができます。

ただし、安全場所を指定する場合には、次の要件をすべて満たす必要があります。

 
(1) 安全場所が75センチメートル以上の手すりや固定された堅牢な椅子などで囲まれていること
(2) 次のすべての内容を記載した掲示物を安全場所に乗船している者から見える位置に掲示すること
(a) 安全場所の範囲を表した図
(b) 船長の了承を得た場合、安全場所内に限り着用義務が課されないこと
(c) 船長は、あらかじめ確認した気象及び海象の予報に基づき船体の動揺が著しく大きくなることが予見されない場合に限り了承すること
(d) 安全場所の範囲内であってもライフジャケットの着用に努めること
(e) ライフジャケットを着用せずに船外に身を乗り出す行為をしないこと
(f) ライフジャケットを着用せずに釣り等の作業をしないこと
※船舶の種類に応じて、乗船者が行う可能性のある船外への転落のおそれを伴う作業を列挙すること
(g) 椅子の上で立ち上がらないこと
(h) (e)(f)(g)の行為をする場合はライフジャケットの着用義務が生じること
(i) 安全場所の範囲内であっても船体が大きく揺れるような荒天時には船長の指示に従いライフジャケットを着用すること
(3) 安全場所に乗船している者から掲示物が常に見えるよう必要に応じて複数の掲示物を掲示すること

 


[10]その他

 次の方は適用除外になります。

・負傷、障害、妊娠中であることによりライフジャケットを着ることが療養上又は健康保持上適当でない方
・著しく体型が大きいことなどの身体の状態により適切にライフジャケットを着ることができない方
・大人が保護及び監督をしている1歳未満の小児


 
以上、非常に長くなりましたが分かる範囲で書いてみました。
私自身も解釈に誤りなどがある部分があるかもしれませんので、その際は後日訂正加筆などする場合がある事をご了承下さい。
なお今回のライフジャケット着用義務化は平成30年2月1日に始まりましたが、違反点数などの行政処分がつくのは平成34年2月1日からになる様です。
船舶所有者、乗せてもらう人、取り締まる人、備品を販売する店舗などで法の解釈度に色々と違いもあるでしょうし、この期間に調整されていくものと思われます。
何れにしましても人の命を守る器具ですから、購入の際には慎重に製品を選ばれて下さい。

f:id:YKTMARINE:20180206142725j:plain

店舗にも少ないですが各タイプを在庫しておりますので着心地を試したりの他、質問事項などがあればお気軽にご来店ください。

f:id:YKTMARINE:20180206142922j:plain

膨張式に関しては製品も改良が重ねられて非常に良くなってきていますので、是非買い替えなどもご検討願います(右:2000年台初頭 ~ 左:最新の製品)

 

以下:参考までに膨張式ライフジャケットについて書いた過去の記事です

yktmarine.hatenablog.com

yktmarine.hatenablog.com